成蹊学園の新たな創造のために
成蹊学園専務理事 加藤 節
私どもは、成蹊学園将来構想検討委員会の下で、一昨年に成蹊学園の将来像を示す文書として策定された「二十一世紀における成蹊学園の新たな創造を求めて」を具体化するための諸施策の検討を続けてまいりました。
理事長宛に答申されたその検討結果が本年五月の理事会において一部修正の上承認されましたので、この場をお借りして、答申の特徴、背景、内容等についてご報告したいと思います。
今回の答申の最大の特徴は、それが学園に関係する多様な方々が関わる形で作成された点にあるといってよいかと思います。それは、各学校に代表される教学サイドと理事会に連なる経営サイドとはもとより、卒業生の代表にも加わっていただいてとりまとめられたからです。こうした形態は、おそらく学園の歴史のなかで初めてのことであり、その点で、本答申は、学園がその総力を挙げて学園改革に取り組む姿勢を示すものとして画期的な意味を持っていると思われます。
本答申にそうした特徴をもたらした背景には、関係者の共通する問題意識がありました。少子化に由来する学校間の競争が激化するなかで、成蹊学園を、レヴェルの高い教育・教育機関としてどのように維持し、発展させるかがそれであります。そこから、答申の内容は二つの大きな方向をもつことになりました。一つは、成蹊学園を他の学園にはない個性をもった学園にするための施策を構想すること、もう一つは、学園の財政基盤の強化策を練ることにほかなりません。
私どもは、他の学園に対して誇るべき個性的なものを数多くもっております。例えば、本年で開学九十年を迎える長い伝統や旧制高等学校以来の卒業生が特にビジネスの世界で刻んできた活躍の歴史があります。また、流行から距離を取りながら地道に学問を積み上げている優れた研究者集団、中村春二先生以来の精神に忠実に若い世代の人格教育に取り組む良心的な教育者集団、私心なく研究・教育の支援に献身してくれる事務職員の存在も誇るに足るものです。市街地にありながら、小学校から大学までを含む美しいキャンパスを維持していていることも、成蹊の得難い財産に属します。
こうした遺産の上に、成蹊をさらに個性的な学園へと創造して行くために、答申には、中村先生の精神を「個性をもった自立的な人間の創造」として受け止めながら、それを、国際化と情報化とが進む現代的条件の中で実現するための施策が盛り込まれています。まず、児童、生徒、学生に自分の個性に見合った多様な進路を主体的に選択する能力を身につける機会を提供するために、小学校の三十人学級の実現、中・高一貫化の強化、大学情報図書館の新設が決定されました。また、小学校、中学・高等学校に国際化、情報化の時代にふさわしいインテリジェント機能を備えた施設の総合的な再開発を行います。
そして、もう一つ、個性ある学園の創造という観点から決定されたのが、学園を挙げて国際理解教育に取り組むための国際教育センターの開設にほかなりません。グローバリゼーションを背景に、世界と地域との一体化が進む世界に生きる若い世代にとって、国際理解のための能力を高めることは必要不可欠であるからです。その意味で、答申では、小学校から大学まで、国際理解能力をもつ人材の養成に努めることをもって成蹊学園の重要な個性にすることが目指されています。
しかし、以上のような新しい施策を実現するためには、しっかりした財政的裏づけがなければなりません。そうした観点から、学園が九十周年を迎える本年を期して大規模な募金活動を開始することが決定され、答申の重要な柱として盛り込まれました。
しかし、それは、単に、多くの皆様に一般的な財政援助をお願いするといった消極的なものではなく、成蹊学園そのものを個性的な学園へと変革するための共同事業に参画していただくという極めて積極的な事業であると私どもは位置づけております。その点で、学園関係者の皆様には、今後様々なご助力をお願いすることになろうかと思いますが、二十一世紀の成蹊が個性あふれる学園へと脱皮していくための共同事業にぜひ参加していただきたく、ご協力のほどを心からお願い申し上げます。
成蹊学園 広報 第47号より
私どもは、成蹊学園将来構想検討委員会の下で、一昨年に成蹊学園の将来像を示す文書として策定された「二十一世紀における成蹊学園の新たな創造を求めて」を具体化するための諸施策の検討を続けてまいりました。
理事長宛に答申されたその検討結果が本年五月の理事会において一部修正の上承認されましたので、この場をお借りして、答申の特徴、背景、内容等についてご報告したいと思います。
今回の答申の最大の特徴は、それが学園に関係する多様な方々が関わる形で作成された点にあるといってよいかと思います。それは、各学校に代表される教学サイドと理事会に連なる経営サイドとはもとより、卒業生の代表にも加わっていただいてとりまとめられたからです。こうした形態は、おそらく学園の歴史のなかで初めてのことであり、その点で、本答申は、学園がその総力を挙げて学園改革に取り組む姿勢を示すものとして画期的な意味を持っていると思われます。
本答申にそうした特徴をもたらした背景には、関係者の共通する問題意識がありました。少子化に由来する学校間の競争が激化するなかで、成蹊学園を、レヴェルの高い教育・教育機関としてどのように維持し、発展させるかがそれであります。そこから、答申の内容は二つの大きな方向をもつことになりました。一つは、成蹊学園を他の学園にはない個性をもった学園にするための施策を構想すること、もう一つは、学園の財政基盤の強化策を練ることにほかなりません。
私どもは、他の学園に対して誇るべき個性的なものを数多くもっております。例えば、本年で開学九十年を迎える長い伝統や旧制高等学校以来の卒業生が特にビジネスの世界で刻んできた活躍の歴史があります。また、流行から距離を取りながら地道に学問を積み上げている優れた研究者集団、中村春二先生以来の精神に忠実に若い世代の人格教育に取り組む良心的な教育者集団、私心なく研究・教育の支援に献身してくれる事務職員の存在も誇るに足るものです。市街地にありながら、小学校から大学までを含む美しいキャンパスを維持していていることも、成蹊の得難い財産に属します。
こうした遺産の上に、成蹊をさらに個性的な学園へと創造して行くために、答申には、中村先生の精神を「個性をもった自立的な人間の創造」として受け止めながら、それを、国際化と情報化とが進む現代的条件の中で実現するための施策が盛り込まれています。まず、児童、生徒、学生に自分の個性に見合った多様な進路を主体的に選択する能力を身につける機会を提供するために、小学校の三十人学級の実現、中・高一貫化の強化、大学情報図書館の新設が決定されました。また、小学校、中学・高等学校に国際化、情報化の時代にふさわしいインテリジェント機能を備えた施設の総合的な再開発を行います。
そして、もう一つ、個性ある学園の創造という観点から決定されたのが、学園を挙げて国際理解教育に取り組むための国際教育センターの開設にほかなりません。グローバリゼーションを背景に、世界と地域との一体化が進む世界に生きる若い世代にとって、国際理解のための能力を高めることは必要不可欠であるからです。その意味で、答申では、小学校から大学まで、国際理解能力をもつ人材の養成に努めることをもって成蹊学園の重要な個性にすることが目指されています。
しかし、以上のような新しい施策を実現するためには、しっかりした財政的裏づけがなければなりません。そうした観点から、学園が九十周年を迎える本年を期して大規模な募金活動を開始することが決定され、答申の重要な柱として盛り込まれました。
しかし、それは、単に、多くの皆様に一般的な財政援助をお願いするといった消極的なものではなく、成蹊学園そのものを個性的な学園へと変革するための共同事業に参画していただくという極めて積極的な事業であると私どもは位置づけております。その点で、学園関係者の皆様には、今後様々なご助力をお願いすることになろうかと思いますが、二十一世紀の成蹊が個性あふれる学園へと脱皮していくための共同事業にぜひ参加していただきたく、ご協力のほどを心からお願い申し上げます。
成蹊学園 広報 第47号より